使える什器はすべてクリーニングして使うことにした。一番年季の入っている開店時からの木製の小豆色什器、10年前に改装したときのスティール製の青色什器と緑色の什器。
これらが混在しているのを隠すために、壁面棚には木製のボーダーを通し、ジャンルのサインを棚ごとに表示することによって一体感を出すことにする。
中棚はこれも木製の「ホタテ」で統一する。特にファサードに関しては16台の木製平台を4×4材で自作した。
壁面の一部に4×4材で意匠を凝らし、店全体を見渡すと木の面が見えるように展開した。
材木はカナディアンレッドシーダー材を直接買い付け、塗装はドイツ・オスモ社のウッドワックス・オーク色を使った。ウエスに染み込ませて磨き上げるように塗るのがコツであることを習った。
ここまできたら書店員という概念はない。全員が大工であり内装業者を兼任していた。
工事のための養生も自分たちで行った。参考書は全て自分の店にあった。
結果としてハンドメイドの改装となった。

工作と移動の日々 2

T書房Y店の売上は、Yショッピングセンタの発展とともに推移してきた実績があるが、ここ数年は売上が伸びなくなってきていた。店長は初代が10年勤務し、現在の店長で10年都合2名である。T書房の中でも安定した運営を行ってきた店舗である。親子の来店が多いので、毎月最終日曜日に子どもの本のおはなし会を続けている。「ノンタンじゃんけん大会」や「アンパンマンイベント」も定期的に行って集客に務めてきた。
接客姿勢についても、Yショッピングセンタから一定の評価をいただいている。

お客さまのニーズとすれ違う理由は?

それでもなぜ、売上が低迷するようになってしまうのか。
最も問題があると思えたのは、仕入れ担当者が「売れた」ということで品揃えをしているが故に、お客様からみて必要な量や商品構成とすれ違ってきていることではないだろうか。
結果的に「売れた」ということに頼ることが商品構成を曖昧にしている。「売れた」ということは商品を展開する上で判断基準のひとつであるに過ぎないと考えた。

売れる商品を揃える事に専念する余り、平面的に回転数の多さが最優先になる。
そこがお客様にとって必要な本の種類や分量と、書店の判断が違ってしまう場面ではないだろうか。
「売れる」ということだけに判断基準をおくのではなく商品構成のバランスやグレードの差を考慮し「売ること」を演出できる棚を作ることが、書店人のノウハウであるに違いない。


例えば、「あかちゃんの命名」は他の「婦人家庭」のジャンルと比べても売れるが、買う側にとって3段も4段もの商品ボリュームは必要ではない。必要なのは定価や本の厚さ、アプローチの違いあるいは著者などで、ボリューム的にも1段あれば十分である。
数の多さはかえってお客様が迷うことになる。むしろ担当者がしっかりと選定し主張すべき棚であるはずだ。同じことが「運転免許」「スピーチ」や「家庭医学」にも言えると思う。

反面、個別の商品はあるのだが、ボリュームが足りない場合もある。食器やグラスの本、刺繍のデザイン本もポプリの本でも探せばこの店にある。
しかし、お客様に聞かれているということは、表示や陳列がうまく行っていないからだ。
また、コンピュータ書を置くのであれば、100坪の駅前インショップとしては、壁面棚4本程度の品揃えは必要ではないだろうか。それが2本程度に収まっていた。内容は初心者向けのみ、しかも実用書版元中心。
陳列は、必要な商品があるとお客に認識させるに足る量を提示しなければならない。
これらのことは、仕入れ担当者がその店のメインターゲットのお客様になったつもりで必要な本を探してみれば問題点が分かってくるはずである。